さっき、家へ帰って来て、ポストを覗くと、来るべきモノが
来ていた。
それは、お家のローンの督促状だ。
でも事前に、銀行には話をしていたので、ただ中身の
確認のためだけに封を切って、金額を見た。
「アレッ...?何...? 34マン 思ったよりも安いやん...。」
「これなら、自転車やっても、約束の月末29日にはイケル。」と
思ったのもつかの間、「―これはヤバイ!」「ヤバイぞー!」
アリンコは、あっという間に原付バイクにまたがり、銀行へと
急いだのだった。
通帳をATMへ入れると、本来直ぐ戻って来なイカンモンが、
「ジイージジ、ジジ、ジッッ」と変な音がしだしたのだ。
戻ってきた通帳を見ると、きっちりと約34マンが落ちていた。
実は、クレの11日の支払いのために、8日の午後に34マンを
入れておいたのだ。
アリンコの場合は、“要注意債権”にランクされているので、
住宅ローンの銀行は、トッテモ~サービスが良くって、期日の
午前中に入金がなくっても、午後に落としてくれたり、また午後が
なくても当日の夜間処理もやってくれたりする。
そのうえ、期日後も毎日同様な動きをやってくれるのだ。
うかつにもアリンコは、それを完全に忘れていたのだ。
そして、このような債権者の「とにかく、取れるときに、
取っておこう!」の精神は、役場にも当てはまっていた。
週末に、入金した折に通帳を見ると、2マン5セン落ち。
固定資産税も少しの間だけ、ジャンプしようと思って、
事前に固定資産税課とハナシをして、郵便局払い用紙も
もらっていたのに、ヤラレていた。
しかもここんとズット銀行落としでなくて、用紙だったのに、
債権者どもは、アリンコの「ヤバ~イ」においを嗅ぎ取って、
行動を開始したと思われる。
その兆候はあった。2~3日前にもクレから突然、A4サイズの
大き目の封書が届いた。
中身は、あろうことか「もう一枚カードを、作りませんか。」
「こっちの新しいカードの方が、金利も安くって、お得です!」と、
でもアリンコは、それにはあまり触手が動かなかった。
なぜなら、このクレには、過日に今までの“取引き履歴”を
取っていたからだ。7月のはじめだったが、電話してそれこそ
1週間もせんうちに、「ゴソッ」と封書で送ってきてくれていた。
当然これは、過払い請求の準備のために取り寄せたもの。
だから、相手にはその時点で、アリンコの状況については、
確認をしていたはずだからだ。
ようはこっちの、“キン○マ”をにぎられているからだ。
だから、うかつにはその「アマー~イ」話にはとても乗れない。
今、アリンコの手元には、10マンほどは財布に入れて確保を
してあるものの、もう時間もなく、とても週明けのクレ支払いには
間に合いそうもない。
いよいよ正念場か。
まいずれにせよ、月曜日にとりあえずは電話してみて、相手との
交渉に賭けるしかない。
考えてみれば、遅かれ早かれ、この状況はいずれやってくる。
好む好まざるにかかわらず、
実は、アリンコのような借金漬けのヒトビト以外には、あんまり
知られていないが、この11月にはホントウに“恐ろしい”ことが
起こるのだ。
例の【サラ金規制法】が本格的に実施される。
たしかに実際のところは、その時になってみないと、一体どんな
ことが具体的に起こるのかは、誰にも分からないと思う。
それでも、アリンコは一応50ヅラぶらさげて、しかもバブルを経験し、
その後のその崩壊を、身をもって体験してきたから言えることがある。
まず、バブル崩壊後の今日までで、“法人の粛清”は、崩壊後の
約15年余りで、一応の決着がついたと思われる。
しかし、これはテレビや新聞のマスコミは、ゼッタイに言わないが、
個人の不良債権処理については、未だ全く進んでないんである。
いわばバブルの負の遺産における、最後の不良債権処理である、
“個人の粛清”の火蓋が、切って落とされようとしているのだ。
正直なところ、アリンコもハッキリ言って、もうハラを括ってある。
バブル崩壊後の、この15年余りで、自分のゴク身近なまわりでも、
破産者はいっぱい見てきた。
それこそ、同じ会社の年収1500や2500も取っている連中でも、
バブル崩壊後は、ツボをふんでいた。
なんせ、アリンコが3000のマンション買ったとき(29歳で)に、
高給取りの連中は、億以上のものを買っていた。
そして、結果といえば、言わずもがなだ。
もう1ヶ月以上前だけど、会社帰りにひとりで飲みに行った。
そこは(仮名)ギョウの王手で、毎週金曜日が、大びんビールが
300になるのだ。そのとき、キムチをあてにして、ビールを3本も
飲んで少し酔っ払っていた。
そのとき、隣りあわせた70チョイ前くらいの爺に、クダヲ巻いてしまった。
でも爺は、トッテモ優しく、アリンコの愚痴話を聞いてくれた。
アリンコ「ボク、もうシンドイ。」「50ツラぶら下げて、バイトもやらんなん。」
好好爺「バイトなんかせんと、本業一本に絞ったらどうや。」
アリンコ「それが出来たら苦労せいへんや。」
好好爺「ウーん。そやけど、50いうたらまだまだけるデ。」
「いままでに、ソコソコ人生経験積んできとんのやさかいに、
それをまだ年齢的に、活かしていく時間もあるデ」
「本読んだり、偉いヒトの話聞いたって、実際はナカナカ
身につかん、やっぱり自分が経験したことは、ほんまに
自分の血となり肉になっていくと思うけどなあ。」と
諭してくれたのだ。
そんな話を思い出しつつも、今はせっぱ詰まった状況を
何とか打開すべく、ガンバルしかない。
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